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輸入車整備事例
トランスミッション故障で走行不能 ~フォルクスワーゲン ゴルフ DSGメカトロニクス交換~
投稿日:2020/02/10
輸入車は国産車とは違った構造がたくさんあります。 エンジンの構造やボディ構造など生産国によって様々な違いがあり、比較すればするほど興味深いものです。
走る、曲がる、止まるの重要部分に関わる輸入車と国産車の違いのひとつとして“トランスミッション”があります。トランスミッションとはオートマやマニュアルと呼ばれる変速機のことです。
今回はトランスミッションの修理事例をご紹介します。
トランスミッションにはたくさんの種類
現在トランスミッションには様々な種類があり、国産車では従来のオートマチックやCVTと呼ばれる無段変速型のトランスミッションが主流となっています。 かつては手動変速のマニュアルミッションとオートマチックのどちらかしかありませんでしたが、技術の進歩と燃費向上のためトランスミッションも様々な進化を遂げています。
輸入車ならではのトランスミッション
輸入車では手動変速、オートマチック、CVTに加え、セミオートマチックトランスミッションというものがあり、これは手動変速ミッションを機械が自動的に変速してくれる構造になっています。これは輸入車ユーザーに人気があるミッションでもあり、クラッチ操作の必要がなく、マニュアルミッションの楽しさとオートマチックの便利さを兼ね備えたミッションです。一部の国産車にも採用されていますが、輸入車では多くのモデルに採用されており、代表的なものにフィアットのデュアロジック、アルファロメオのセレスピード、BMWのSMGなどがあります。
デュアルクラッチトランスミッションとは?
そしてもうひとつ、デュアルクラッチトランスミッションというトランスミッションがあります。 このトランスミッションの操作は通常のオートマチックと変わらないのですが、マニュアルミッションと同じようなクラッチがトランスミッション内についており、走行フィーリングはマニュアルミッションに似た部分があります。内部構造は2つのクラッチを介して変速するので、低速でシフトアップを行いグングン加速していくのが特徴のトランスミッションです。
デュアルクラッチトランスミッションといえばフォルクスワーゲンのDSG、アウディのSトロニックが有名です。2社の車両ラインナップにはデュアルクラッチトランスミッション車が多いため、このトランスミッションを搭載している車両は非常に多く人気があります。 しかしこのトランスミッション、トラブルが多いのも実情なのです・・・。 主なトラブルとしては、シフトショックが大きくなった、発進時にガタガタと振動する、停止時に大きなショックが発生する、そしてバックしなくなる、全く走行できなくなる等の症状も起こってしまいます。
DSGトランスミッションの修理事例をご紹介
今回ご紹介する修理車両は2011年モデルのフォルクスワーゲン ゴルフ。1.4リッターTSIエンジンと7速DSGトランスミッションの組み合わせです。 急に走行できなくなりロードサービスで搬入いただきました。エンジンはかかるが、シフト操作をしても前後とも全く動かない症状となってしまっています。早速、お客様へ故障状況と以前から変化がなかったかなどのヒアリングを行わせていただき、故障診断機を車両コンピューターと通信して不具合状況を診断します。
診断結果はトランスミッションの内部異常が確認され、具体的には作動油圧低下が走行不能の原因であることを突き止めました。 この状態になってしまうとトランスミッションを分解修理しなければならず、時間も費用も大きく掛かってしまいます・・。 通常ですとユーザー様へ色々な修理パターンをご提示させていただき、修理相談を進めさせていただくのですが、今回の症状はもしかして・・・と調べてみるとやはり!でした。
やはり!
それはリコールです。2019年8月にフォルクスワーゲンジャパンが7速DSGのメカトロニクスを対策品に交換するリコールを発表していました。 今回の症状はこのリコールに該当する可能性が高いことをユーザー様へお知らせし、フォルクスワーゲンディーラーさまで点検を行いリコール対象であるか確認いただく事となりました。結果はリコール対象の判断となり、ディーラーさまで無償修理していただけることに。
ユーザー様へはリコールの案内通知が送付されていたようですが、重要な事とは知らずにそのままにしていたようです。機械に詳しくないユーザー様にとっては仕方がないことかもしれませんが、整備工場がDSGのリコールが発表されたことを事前に情報入手していなければ、高額な修理費用をかけて実費で修理していたかもしれません。
破損状態に驚き
修理完了後に交換部品を確認させていただくと、リコール内容通りメカトロニクスアッパーハウジングのアキュームレーター取り付け部が大きく破損していました。ここは非常に強い油圧がかかる部分なのですが、ここまでなるとは驚きです。
対策品に交換いただいたので、この先は安心してお乗りいただけます。
症状が出てても気づきにくいもの
修理完了後は正常に走行が可能となり、ユーザー様は今までのシフトフィーリングから大幅に快適になったとの事です。やはり完全に動かなくなる前に少しずつ悪い症状が出ていたのかもしれませんね。でも普段乗っていると少しずつの変化は気づきにくいもの。 そのために定期的に整備工場で点検することによって、少しの変化もメカニックが気付く場合もあります。自動車は人間と同じで、定期的に車のお医者さんであるメカニックに点検してもらうことが大切です。
まとめ
今回は入庫いただいた整備工場で修理を実施しませんでしたが、整備工場は修理するだけではなく、ユーザー様のためにも普段からリコールや最新の技術情報にもアンテナを張っておくことが大切です。特に輸入車は情報を入手しづらい分野でもありますので、輸入車整備は様々な情報を得る環境があり信頼できる輸入車整備工場にお願いすると安心ですね。
フォルクスワーゲン DSGリコール情報
[Dr.輸入車ドットコム編集部]