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驚きのエアコントラブル事例 ~シトロエン C4 エアコンコンプレッサー交換~

投稿日:2020/08/31

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もうすぐ9月に入るところですが、まだまだ暑い日が続きますね。 これから朝晩は以前に比べて気温が下がり過ごしやすくなると思いますが、昼間はまだ気温が上がりますので熱中症などの対策を続けないといけません。 クルマにとっても夏の暑さは過酷ですが、それに加えてクーラーもフル稼働となり負担もさらに増える時期が続きます。 クルマのトラブルの中でもクーラーやヒーターといったエアコンに関連する故障は非常に多いものです。 この記事ではエアコンメンテナンスを怠ったため、驚くようなトラブルが発生した事例をご紹介します。

エアコンで多いトラブルは

エアコンに関連するトラブルといえば、冷風や温風が出なくなった、風量や風向が調整できなくなった、エアコンを作動すると異音が発生する、などが挙げられます。 中でもクーラーが効かなくなったという故障が多く、これは国産車、輸入車ともよくある故障で、年式が経過するごとに故障頻度が増えていきます。 このクーラーが効かなくなる原因の多くは、クーラーガス不足によるものが大半です。基本的にはクーラーガスはエアコン回路を循環するので微量ずつしか減らないのですが、エアコン部品や接続部から漏れてしまうことがあり、そうなるとクーラーガスが規定量より足りなくなってしまいクーラーが効かなくなってしまうのです。

クーラーはなぜ冷風が出るの?

クーラーが作動する構造を簡単に説明すると、エンジンからベルトを介して作動するエアコンコンプレッサーでクーラーガスを高圧の液体に圧縮し、室内にあるエバポレーターへエキスパンションバルブという部分からクーラーガスを一気に吹き出します。そうすると高圧のクーラーガスが周囲の熱を吸収して低圧の気体へ気化します。その際に熱を奪われたエバポレーターは冷却され、そこに室内へ向けて風を当てることによって室内へ冷風が送られるという構造になっています。これは家庭用エアコンや冷蔵庫と基本的には同じ構造なんです。

クーラーが作動する大きなポイントはクーラーガスの圧力変化です。ですのでクーラーガスが規定値より少なくなってしまうとこの圧力変化の幅が小さくなってしまい冷却効果が落ちてしまいますので、クーラーガス量はエアコンにとって非常に重要なものでもあります。

家庭用エアコンや冷蔵庫ではガス漏れで故障したという事は少ないと思いますが、前述の通り自動車ではガス漏れが非常に多いです。その理由はご存じの通り自動車は動くということです。動く=走ることによって大きな振動が各部品に発生しますし、外気温度の影響も大きく受けます。これが何年間も続くことで自動車のエアコンシステムには大きな負担がかかるのです。

クーラーガスが漏れた場合の対処方法

クーラーガスが漏れてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。対処方法は大きく分けて2つあり、漏れ状況によって部品交換が必要なケースと、ガス補充で回復するケースがあります。

明らかな漏れがある場合はその箇所や部品を交換して修理が必要になります。配管つなぎ目のパッキン交換や比較的安価なセンサーなどの部品交換だけで済むこともあれば、場合によっては高額になるエアコンコンプレッサーやコンデンサー、エバポレーターといった部品を交換しなければならない事もあります。エアコンガス漏れ修理は現在発生している故障と今後発生するかもしれない故障を予測した作業が必要ですので、信頼できる整備工場で点検修理してもらう事をおすすめします。

意外と多いのが、どこから漏れているか特定できないほどの微量な漏れが発生しているケースです。通常使用で減ってしまう量よりも多く、ガス補充しても数ヶ月後にはクーラーが効かなくなるといった事があります。この場合はクーラーガスを補充して経過観察する事になる場合が大半になり、これはガス漏れ箇所を経過観察しながら特定する意味と、高額な修理費用をかけるよりもクーラーガス補充の方が安価であるからです。ここは整備工場の判断と、ユーザー様の使用環境を踏まえた相談が大事になってきます。

驚きのトラブル事例

しかしクーラーガスを補充すれば回復するからといって、ガス補充ばかり繰り返していては驚くようなトラブルが発生することがあります。そんなトラブル事例をご紹介します。

ある整備工場へクーラーが効かなくなったのでガス補充して欲しいという依頼でご入庫されたシトロエン C4。確認すると全く冷風が出ない状態です。お話をお伺いすると1~2ヵ月おきにクーラーガス補充しているそうで、今まで3回ほど補充しているそう。早速点検するとユーザー様が仰る通りクーラーガスが空っぽです。クーラーガスを補充する前にどの程度の漏れがあるかを確認するため、エアコン配管を真空状態にして密封状態を確認します。大きな漏れがある場合は短時間で真空が保てなくなってしまうので、この状態ではクーラーガスを補充してもすぐにガスが無くなってしまう可能性があるからです。

エアコンガス圧を点検する機器を接続し、真空ポンプで配管内を負圧にしていきますがなかなか負圧になりません。これは明らかな異常です。そこでエンジンルームや室内を点検し、そして車両を作業リフトで上げて点検すると・・・。



なんと!エアコンコンプレッサー本体に穴が開いていました。驚きです!

ちょうど取り付け部で隠れてしまうコンプレッサー裏側だったのですぐに発見できませんでしたが、何か異常を感じたメカニックが見つけ、発見した本人も大変驚いていました。 コンプレッサー内部破損のため、本体を内部の部品が突き破って出てきたようです。破損原因はコンプレッサー内部の焼き付き破損の可能性が高いと思われ、その焼き付き破損の原因はユーザー様へのヒアリングで判明しました。

エアコンコンプレッサーが破損した原因は

ユーザー様は以前クーラーが効かなくなったためガソリンスタンドで点検してもらったところ、クーラーガス補充で回復したので、その後もカー用品店や別のガソリンスタンドでガス補充を繰り返していたとの事。そして今回はガソリンスタンドやカー用品店でガス補充できないと言われてこの整備工場へ入庫したそうです。 この流れから考えると、どのガソリンスタンドもカー用品店も過去履歴が分からないままガス補充だけをされたようです。エアコンコンプレッサーはエンジンと同じで内部を潤滑するためのオイルが必要なのですが、ガスが漏れているとオイルも一緒に抜けていってしまいます。クーラーガスにも潤滑性能がありますが、オイルが不足すると正常な潤滑ができなくなり焼き付きを起こしてしまうため、今回はガス補充だけを繰り返したことによるオイル不足のため、コンプレッサー内部が焼き付き破損した事で間違いないと思われます。

今回はエアコン配管内部に破損した細かな破片や鉄粉が混ざっていないかを確認したうえ、エアコンコンプレッサー交換を行い、エアコンガスを規定値まで封入して完了となりました。交換後はクーラーガス漏れも無くなったので、以前からのガス漏れはエアコンコンプレッサーやコンプレッサー接続部からガスが少しずつ漏れていたのかもしれません。

まとめ

エアコンシステムは多くの部品で構成され、その構造をしっかり理解して整備を行うことが必要です。そしてクルマも人間と同じように、同じ病院(整備工場)で診てもらうことで今までの作業履歴を踏まえた整備や修理を行ってもらえますし、その車や自分自身のことも分かって整備を進めてもらえる大きなメリットがあります。今回はもし同じ整備工場で続けて作業していたら、ガス補充だけでなく状況にあわせてオイル補充も行っていたはずです。そうすればエアコンコンプレッサーが焼き付き破損することはなかったと思われ、高額な修理代も不要になったかもしれません。。。

今回のトラブル事例は珍しいですが、オイル不足でエアコンコンプレッサーがロックしてしまい、ベルトが破損してエンジンも損傷してしまうといった事例もあります。エアコンの整備も信頼できる整備工場で行うことと、いつも整備をお願いできる整備工場を見つけ、定期的に点検してもらうことも愛車を長持ちさせるポイントになります。

[Dr.輸入車ドットコム編集部]

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